現代社会において、多くの人々が「疲労」を慢性的に感じています。
身体の疲れだけでなく、心の疲れ、いわゆる「精神的疲労」も深刻な問題となっています。
働き方改革や健康志向が進んでいるにもかかわらず、なぜこれほどまでに疲労感が蔓延しているのでしょうか?
本稿では、その背景にある要因を探りつつ、具体的な研究結果も紹介していきます。
テクノロジーによる絶え間ない刺激
まず注目すべきは、スマートフォンやパソコンなど、テクノロジーの普及による「常時接続」の状態です。
情報は24時間流れ続け、私たちは常にメール、SNS、ニュースなどに応答しなければならない状況に置かれています。
この「絶え間ない刺激」が、脳に慢性的な負荷をかけ、知らず知らずのうちにエネルギーを消耗してしまうのです。
カリフォルニア大学アーバイン校の研究では、「メール通知を受ける頻度が高い人ほど、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが上昇し、集中力が著しく低下する」ことが明らかになっています。
この研究は、被験者に数日間メール通知を遮断した状態と通常の状態で過ごしてもらい、
ストレスレベルを比較したもので、通知を遮断したグループは明らかにストレスが減少し、集中力も向上したという結果が出ています。
つまり、私たちの脳は「絶え間ない通知や情報の波」によって休まる暇がなく、常に小さなストレスに晒され続けているのです。
境界のない働き方
次に指摘すべきは、仕事とプライベートの境界線が曖昧になっていることです。
リモートワークの普及によって、以前より柔軟な働き方が可能になった一方で、「いつでも働ける」という状況は「常に働いてしまう」リスクも孕んでいます。
夜遅くにメールをチェックしたり、休暇中に仕事の電話を取ったりすることが当たり前になってしまうと、脳は「休息モード」に切り替えることができません。
この「オンとオフの切り替え不全」も、疲労感を慢性化させる要因となっています。
心の余白が失われている
さらに、現代人は「心の余白」を持つ時間が極端に減っています。
スケジュールは常に埋まり、ちょっとした待ち時間でもスマホで何かを調べたり、SNSを見たりしています。
かつては移動時間や待ち時間などに自然と「ぼーっとする」時間があり、脳はそこで情報整理を行っていました。
ところが現代では、その隙間すらも何らかの情報で埋められ、脳がリフレッシュする機会を失っているのです。
まとめ:休息の「質」を取り戻すことが必要
このように、現代人が疲れ果てている背景には、テクノロジー、働き方、ライフスタイルの大きな変化が密接に関わっています。
単なる「長時間労働」の問題ではなく、「脳が休めない」「心が余白を持てない」という深層的な問題が隠れているのです。
疲労回復のためには、単に睡眠時間を確保するだけでなく、意図的にデジタル機器から離れ、仕事と私生活の明確な境界を作り、ぼーっとする「何もしない時間」を取り戻すことが大切です。
「質の高い休息」が、現代の疲れを癒す鍵となるでしょう。